EASTON EC90SLをピスト化! 高校生選手の新しい武器
高校2年生のご依頼主。
しかし自転車競技歴は、なんと9年です。
小学校3年生のころからのお付き合いで、これまでも一緒にトラック競技を楽しんできました。小さかった彼が、今では自分の競技スタイルを考えながらホイールを選ぶ高校生に。時間の流れ、早いですね。
1. ピストフレームに入るか問題
今回のご相談は、手持ちの古いチューブラー用ロードホイールを、トラック競技用に組み替えたいというもの。
もちろん組み替えもできます。ですが、せっかく費用をかけるなら、現代のチューブレスタイヤを使えるホイールをベースにしたほうが、これから先も楽しめます。そこで「ロード用ホイールをピスト用にコンバートする」作戦をご提案しました。
ここで立ちはだかるのが、ピストフレームのクリアランスです。
最近のディスクブレーキ用ロードホイールは、外幅30mm超えも珍しくありません。太くて頼もしいのですが、クリアランスの限られたピストフレームには、なかなか入ってくれません。
今回の条件は、外幅28mm前後まで。さらに内幅は、新ETRTO規格に適合する19mm以上。できれば21mmほしいところですが、この条件でピストに収まるホイールとなると、急に選択肢が少なくなります。
いくつか候補を検討した結果、中古で見つけてお持ち込みいただいたのがこちら。
EASTON EC90SL
- リムハイト:前後55mm
- スポーク数:フロント16H/リヤ20H
- リム幅:外幅28mm/内幅19mm
今では少し珍しくなった、少スポークの構成です。
実は家内が同じEC90SLの38mmハイトを使っており、以前借りて乗ったことがあります。これがなかなか良く走る。しなやかさがあり、高速巡航が気持ちいい。そんな実体験もあって、今回はこちらをおすすめしました。
過去には全日本ロード女子で優勝した実績もあるホイールです。軽い選手との相性も、きっと悪くないはず。
硬めのリムに、少なめのスポーク。しなやかにたわみ、バネのように加速へ返してくれる構成です。体重50kgのご依頼主なら、しっかり武器になると判断しました。
こりゃ、良か武器になりそうです。
2. 分解してみると、ひとクセある構造
バラしてみると、ハトメに見えた部分はアンカーナットでした。
ニップルにもネジ山が切られており、スポークとリムの両方へねじ込む、少し変わった構造です。リムはMAVIC KSYRIUM SLの構造に似ています。
ニップルは専用品のため、状態を確認して再利用します。
中・長距離種目の底上げを狙うご依頼主には、純正と同じくSAPIM CX-RAYを選択しました。
ハブは、16H/20Hというこのホール数をラインナップしているPOLSO FH008を採用。今回のホイールにぴったりの役者です。
3. チューブレスは、空気漏れ対策もきっちりと
チューブレスバルブは、リムとの接地面が広い「かまぼこ型」を使用。さらにリムとの接地面へマクハルを塗布して、気密性を高めます。
この組み合わせにしてから、原因不明の空気漏れがずいぶん減りました。小さな部品ですが、こういうところが後々の安心感につながります。
タイヤは、Grand Prix 5000 TT TRの25C。
万が一、激しい落車でタイヤが外れたときに、走路へシーラントを盛大にぶちまける……そんな事態はなんとしても避けたいところです。今回はマクハルを選択し、施工後に余分な溶剤を吸い取ることで、タイヤ内へ余計な水分を残さないようにしています。
トラック競技用として、なかなか良い組み合わせになったと思います。
4. 完成。新鮮で、かなりカッコいいです
無事に組み上がりました。
フロントは、ロードらしいラジアル組から、トラック競技用らしくJIS組へ変更。見た目も走りも、ピストらしさがぐっと増しました。
ロード寄りの構成ではありますが、中・長距離や高速巡航で気持ちよく走ってくれそうです。こうした仕様でご依頼いただくことは珍しいので興味津々。私も元々中・長距離の選手でしたので、正直ちょっと乗ってみたいです。
納品時は親子で受け取りに来てくださり、とても喜んでいただけました。
最近は思うように成績が伸びない時期にあるそうですが、新しい武器とともに自己ベスト更新を目指すとのこと。
今月末には強化訓練、記録会、チャレンジ・ザ・バンクと予定も目白押しです。
リザルト、いつもしっかりチェックしています。頑張ってください!
このホイールと一緒に壁を越えて、新しいステージへ駆け上がっていく姿を楽しみにしています。競技場へ足を運ぶ機会は以前より少なくなりましたが、安全と活躍を、いつも陰ながら祈っています。