LOOK カーボンコラムの縦割れ修理
今回はLOOKのカーボンコラム割れです。
真っ直ぐ、縦に割れています。
まさに竹を割ったような割れ方。
これが人間の性格なら、付き合いやすいヤツです。
ばってん、修理となると、とても厄介な相手です。
カーボンコラムはハンドル、ステム、フォーク、フレーム、そして乗り手の体重や入力がつながる重要箇所です。
つまり、何かあると一番怖い部分とも言えます。
1. なぜコラムは割れるのか
原因はいくつか考えられます。
- プレッシャーアンカーのオーバートルク
- ステムのオーバートルク
- トップキャップのオーバートルク
この中で、私が一番怪しいと考えているのは、トップキャップの締めすぎです。
トップキャップの指定トルクは、だいたい1〜2Nm程度。かなり低いトルクです。
ところが、ここを強く締めすぎると、プレッシャーアンカーが上にずり動いてしまうことがあります。
プレッシャーアンカー自体は、8Nm前後の高いトルクで、コラム内に広がる方向へ力がかかることで固定されています。
さらにその外側を、5〜6Nmほどで内側へ締め付けるステムが覆っています。
トップキャップをオーバートルクで無理に締め込むと、プレッシャーアンカーを上へ引き上げるような力がかかり、カーボンコラムの内側に強いストレスが入ります。
その力が限界を超えてしまうと、コラムが割れてしまうのです。
持ち込まれる車体で、コラムが割れている個体を見ることは、実はそれほど珍しくありません。
2. 今回の修理方針
今回の修理方法は、割れてしまったコラムの内側にアルミパイプを接着し、物理的に構造体を追加するというものです。
外側から貼る修理ではなく、内側から支える修理です。
カーボンコラムの内側に、ぴったり合うアルミパイプを入れる。
割れた部分だけで力を受けるのではなく、内側に芯を作る。
そういう考え方です。
これなら、トップキャップの締め込みに対しても、ある程度の余裕を持たせることができます。
もちろん限度はあります。
どんな修理でも、締めすぎれば壊れます。
そこは機材のせいではなく、人間側が気をつけるところです。
3. アルミパイプを削り出す
まずはコラムの内径を計測します。
ここが合っていないと話になりません。
ゆるすぎれば意味がないし、きつすぎれば入らない。無理に入れれば、それこそ別のストレスを作ってしまいます。
コラム内径にちょうどよいサイズのアルミパイプは、市場に存在しません。
だがしかーし! 無いものは作ればいいのです。
少し太めのアルミパイプを旋盤で削り、現物合わせで確認しながら、ちょうどよいサイズに削り出していきます。
削った後は、表面を粗めのヤスリで荒らして足付けします。
接着剤がしっかり食いつくようにするためです。
ここも地味ですが、大事なところです。
ツルツルのまま接着すると、引っ付かず剥がれやすくなります。
4. 肉厚の選択は人それぞれ
今回は軽量が売りのSLフレームでしたので、肉厚は薄めのアルミパイプを選びました。
ただし、いつも薄めを選ぶわけではありません。
たとえばピストのように、スタンディングで強い力がかかるステムまわりなら、肉厚のあるアルミパイプを選びます。
ここは、ユーザーによって要望が分かれるところです。
軽さをできるだけ残したいのか。
剛性感を優先したいのか。
どんな乗り方をするのか。
そういう話を聞きながら決めていきます。
修理は、壊れた場所だけを見て決めるものではありません。
その人がどう使うかまで含めて考えます。
5. 接着して、熱を入れる
アルミパイプに強力な接着剤を塗布し、コラム内へ挿入します。
その後、ステムを使って圧着。
さらに熱を加えることで、しっかり固めていきます。
見た目は少し地味です。
でも、こういう修理こそ大切です。
外から見えないところに、どれだけちゃんと手を入れるか。
乗り手の安全をどれだけ確保するか、そこが大事です。
6. キズは直ってない
接着完了です。
見た目の縦キズはそのまま残っています。
ただ、内側にはアルミパイプが入っています。
割れたコラムだけで力を受ける状態ではなくなりました。
外側から見れば、傷はまだ見えます。
でも内側には、支えになる一本の芯が入っています。
7. スターナットを入れる
最後に、一インチ用の小さめのスターナットを加工し挿入し、トップキャップを取り付けられるようにします。
写真は忘れました。
こういうところ、まだまだですね。
よく聞かれるのが、
「その後、コラムカットしたくなった場合は困るのでは?」
という質問です。
スターナットの上であれば、アルミパイプごとカットして対応できます。
アルミパイプは、できる限りコラム内に長めに入れています。
多少カットしても、補強としての役割が残るように考えています。
8. 修理後もトルク管理は大切
この修理では、内側に構造体を足すことで、かなり安心感のある仕上がりになります。
過去にも、この方法でかなりの数のコラムを修理してきました。
今のところ、同じ箇所でのトラブル報告は受けていません。
だからといって、何をしても大丈夫という意味ではありません。
組み付けトルクを守ること。
定期的に確認すること。
異音や違和感があれば、乗るのを中止して点検すること。
そこまで含めて、修理後の付き合い方だと思っています。
9. カーボンコラム点検のすすめ
以前に比べれば減りましたが、うちに持ち込まれるフレームでコラムにクラックを発見することは、意外に少なくありませんでした。
使っている本人も、バラさない限りはなかなか気づかないようです。
安全に直結する重要なパーツですので、定期的な点検をお願いしています。
もし割れていても、状態によっては直せることがあります。
もちろん、すべて直せるわけではありません。
安全に疑問が残る場合は、修理をお断りすることもあります。
直せるかどうか。
直すべきかどうか。
そこから一緒に考えます。
実際の修理可否は、損傷状態と使用状況を確認したうえで個別に判断します。