ELVES OROME BH56をトラック用ピストホイールへ組み替えた話
将来は東京の大学へ進学し、自転車競技部で頑張りたい。
そんな目標を見据え、高校生ながら実業団チームで走っている子から、ホイールの組み換えをご依頼いただきました。
ロード用のELVES OROME BH56を、トラック競技で使えるピストホイールへ組み替える仕事です。
1. 高校生からのホイール組み換え相談
若い選手からの相談です。
将来の目標がはっきりしていて、今やるべきことも見えている。
高校生でありながら実業団チームで走り、さらに先の競技生活まで見据えている。
いや、しっかりしとる。
おじさんが同じ年頃の時は、そこまで何かを見据えていたかというと、かなり怪しいです。
今回持ち込まれたのは、ELVES OROME BH56のリムブレーキ用ホイール。
あまり馴染みのないホイールで、私も今回初めて触ります。
2. 硬くて、よく進むリム
触ってみると、リムの手触りがすごく硬い。
本人の評価も高く、硬くて転がりがよく、とても進むとのことでした。
良いホイールなので、このリムをトラック競技に使えるようにしたい。
そういうご要望でお預かりしました。
構成は、リムハイトが前後とも56mm。
ホール数は、フロント20H、リア24H。
リムブレーキ用としては、よくある平均的な構成です。
リムの内幅は実測で20mmありました。
割と新しい設計のモデルのようです。
確かに、これをピスト用のホイールに組み替えたら、よく走りそうです。
3. ハブは台湾から取り寄せる
ハブは、定番のノバテックピストハブを使います。
ただし今回は、台湾本国から肉厚のあるものを取り寄せました。
国内で流通しているノバテックのピストハブは、肉厚が薄めのものばかり。
台湾本国のものとは、なぜか少し仕様が違うように見える。
型番も同じなのに、なぜだろう。
今回はできるだけ剛性感を出したかったので、肉厚のある方を個人輸入で取り寄せました。
使用感に違いが出るかは分かりませんが、太い方が強そうに見えます(笑)
4. スポークは鬼のように硬いMac CN 494
スポークは、Mac CN 494のエアロスポークを選びました。
これがまた、鬼のように剛性があります。
太く、多少重い。
しかし、このスポーク自体がほとんどたわまない。
パワーのある短距離スプリンター向けの選択です。
スクラッチやポイントレースなどの中長距離種目は、一切眼中にないとのこと。
そこまで方向性がはっきりしているなら、こちらも迷いません。
短距離に寄せる。
踏んだ時に、できるだけ逃げない方向で組みます。
今回はインターナルニップル仕様になります。
5. ニップルを回す手応えで分かる硬さ
ホイールを組む時、ニップルを回す手に伝わる感覚があります。
このリムは、本当に硬そうです。
私の好きなリムでいうと、ENVEやReynoldsに近い感触。
少し前までは、硬いリムといえばアメリカのものが思い浮かびました。
でも最近は少し違ってきています。
台湾や中国のリムにも、かなり良いものが出回っていると感じます。
ブランド名だけで判断する時代では、もうないのかもしれません。
触って、組んで、張ってみる。
その時の手応えで、だいたいの性格が見えてきます。
6. 組めました。走りそうです
組めました。
格好いいです。
これは走りそう!
ロード用の雰囲気から、かなりトラック寄りの性格に変わったと思います。
7. ラジアル組からJIS組に変更
元々はフロントがラジアル組みでしたが、今回は短距離種目を狙うとのこと。
そこで、前後ともJIS組みにしてアヤをとり、剛性アップ方向へ組み方を変更しました。
フロントには、特別仕様のセンターナットを取り付けています。
おしゃれですね、空力に影響あるとの声も聞こえてきますが真偽不明です。
タイヤはGP5000クリンチャー25C。
中にはTPUチューブを入れています。
走路にシーラントをぶちまける、そんな事態だけは避けたいです。
8. 狙いどおりの特性へ
狙いどおりの特性になったようです。
本人にも満足いただけたようで、練習や競走にも使っていただき、しっかり結果にもつなげてくれています。
こういう報告は、やっぱりうれしいです。
組んだ時点では、こちらは「狙いどおりにできたはず」と考えます。
でも、実際に走らせて、踏んで、レースで使って、本人がどう感じるか。
そこまで聞けて、ようやく少し安心できます。
9. 東京の大学へ
この春、目標だった東京の大学にも合格。
今年の4月からは、大学一年生の自転車競技部員として競技を楽しんでいます。
良いですね。
おじさんからすると、直視できないほど眩しいです。
私のまわりの若者たちは、どんどん成長し、遠く背中すら見えない存在になっていきます。
そんな若者たちの背中を眺めながら、嬉しいような、淋しいような、はたまた置いていかれるような。
毎年、少し複雑な気持ちで若者の巣立ちを見守っています。
10. 若武者の安全と活躍を祈る
インカレや国体でも、きっと活躍するんだろうなぁ。
そう思える選手です。
もちろん、活躍してほしい。
でも何より、まずは安全に走り続けてほしい。
機材を触らせてもらった者として、そこはいつも思います。
日々、若武者の活躍と、何よりも安全を祈るばかりです。
どんな吉報が届くのか、楽しみにしています。